BUILDER WORK

「中途社員の半分が、職人出身の施工管理」
──平均2年で現場を任せる、分譲マンションを中心とする電気工事会社の設計図

「中途社員の半分が、職人出身の施工管理」 ──平均2年で現場を任せる、分譲マンションを中心とする電気工事会社の設計図

東京・葛飾に本社を置く株式会社テクノサイシングは、創業以来55年、電気工事一筋でやってきた会社である。なかでも主軸に置いてきたのが、分譲マンションの電気設備だ。

分譲マンションの電気工事は、関わりが長く続く仕事だと言われる。 工場のような建物であれば、発注者は一者。だが分譲マンションは、購入された方が住戸の数だけいて、そこにデベロッパーも加わる。引き渡し前から住まい手が決まっていき、部屋によっては仕様の変更が入る。一部屋ごとの要望に、その都度応えていく仕事だ。

同社は、この分野に絞って力を注いできた。ゼネコンからの要求に応え、コストの要望にもできるかぎり近づける。それを積み重ねた結果、いまではデベロッパーから直接、指名に近い形で声がかかることもある。以前は40戸程度が中心だった依頼は、いまは70戸から100戸前後へ。電気工事だけで1億円を下回る案件はほとんどない。むしろ、心苦しいが、断らざるを得ない状況だという。 本社所在地である葛飾の学校の建て替えなど、公共の案件も継続して担当する。

依頼が大きくなるということは、それだけ、現場を任せられる人の存在が大きくなる。そして同社は、施工管理の経験がない人にも入口を開いている。現場を知っている方であれば迎え入れる、と。

話を聞いたのは、取締役統括部長の齋藤氏。ソフトウェア・システムの会社でシステムエンジニアとして働き、通信関係の事業部にも在籍した。30代前半で入社してからは営業を7〜8年務め、現在は営業と工事の両部門を統括している。

施工管理の経験を問わないという判断は、この会社の何によって支えられているのか。分譲マンションに注力し続ける会社の設計と、その採用の考え方を紐解く。

「”絶対施工管理”、というのはなくて」——入口に、経験の肩書を置かない

――施工管理の求人には、「実務経験3年以上」といった条件が並ぶことが多い。現場で長く手を動かしてきた方が管理側へ移りたいと思っても、応募の段階で行き止まりになってしまうケースは少なくありません。貴社は、入口の条件をどのように考えていらっしゃいますか。

弊社は、"絶対施工管理の経験が必要"という事は考えていません。

もちろん、施工管理のご経験がある方に来ていただけるのは、ありがたいことです。ただ、それが応募の条件かというと、そうではありません。

見ているのは、図面が読めるかどうか。そして、現場がどう動いているかを体で分かっているかどうかです。

その2つが揃っていれば、あとはこちらで教えられることのほうが多いんです。だから、「職人さんをやっていました」という方も歓迎しています。

――方針として掲げるだけなら、どの会社でも言えることだと思います。実際に施工管理未経験の方を迎えたとき、受け入れる側の体制がなければ、入った本人が苦労するだけになってしまう。貴社では、その方針が社内でどう機能しているのでしょうか。

弊社は中途社員の半分が、いわゆる職人としてのご経験があって、施工管理は未経験だった、という人たちなんです。

そのおかげで大きいのは、現場から管理側に移ったときに、どこで手が止まるのかを、みんなが分かっていること。自分が通ってきた道ですから。

図面が読めて工事も分かっている方が、なぜ管理でつまずくのか。ここは、実際に経験していないと分かりにくい部分だと思います。工事の知識と、管理の段取りは別のものなので。

弊社の場合は、隣の席に同じところを通ってきた先輩社員が複数います。だから、聞けばだいたい話が通じる。

体系立った研修があるというより、そういう人たちが集まった結果として、教え合う形が出来上がっている、という感じです。

「断りに行くのが、一番苦労します」——選ばれ続けた結果として

――貴社は分譲マンションの電気工事に注力されています。今はこの分野を手掛ける会社が少ない、というお話を伺いました。同じ電気工事でも、分譲マンションと他の建物とでは、何がそれほど違うのでしょうか。

ひとつは、関わる方の数だと思います。

工場のような建物であれば、発注者は一者です。ところが分譲マンションは、購入された方が住戸の数だけいらっしゃって、そこにデベロッパーさんも加わる。

建てている途中から住まい手が決まっていって、部屋によっては仕様が変わっていくんです。「この部屋にコンセントが欲しい」「スイッチを移動してほしい」といったご要望が出てくる。オプション工事と呼んでいるものです。

作業そのものは、電線とコンセントですから、大掛かりなものではありません。難しいのは、その一つひとつを、工程の中で追い続けなければならないことです。

どの部屋で何を変えたのか。それが今どの工程まで進んでいるのか。一つでも取り違えれば、壁紙の張り替えなどで手戻りが生じてしまいます。

感覚としては、大きな建物の中に、非常に小規模な工事が大量に発生しているようなものです。金額は小さくても、管理する側としては常に気を配らなければならない。

電気工事のなかでも、最後まで手がかかる領域だと言われます。実際、分譲マンションを手掛ける会社は少なくなってきていますし、その傾向は最近になって強まっていると感じます。

――担える会社が限られてしまうのも、無理はないのかもしれません。そのなかで、貴社に声がかかり続けている理由を、ご自身ではどう捉えていらっしゃいますか。

難しい仕事だという認識は、私たちにもあります。ただ、弊社はこの仕事を長くやってきました。積み上げてきたものがあるので、引き受けられる。逆に言えば、経験のないところから始めるのは、なかなか難しい仕事だと思います。

そのうえで、ゼネコンさんからの要求に対しては、なるべく応えようと努めてきました。コストに関しても、できるだけご要望に近づけるように応えてきています。そこを評価していただけているのだと思います。

それと、弊社はデベロッパーさんにも直接コミュニケーションを取らせてもらっています。「テクノサイシングを使ってみたら」という形で、デベロッパーさんからゼネコンさんに一声いただけると、話が早く進むんです。ゼネコンさんによっては、購買の方がそれをやってくださると決めやすくてありがたい、と言っていただけることもあります。

依頼の規模も変わってきました。前までは40戸ぐらいの分譲マンションが多かったのですが、いまは70戸から100戸前後が平均です。

――依頼が大きくなれば、その分だけ受けられる量にも限りが出てくるのではないでしょうか。

そうですね。受けられるかどうかは、現場を任せられる人がいるかどうか。それだけなんです。

だから、心苦しいのですが、お断りすることも少なくありません。営業をしていて一番苦労するのは、実は依頼を受けることではなく、断りに行くことなんです。

「型があるから、現場が回る」——残業が少ない理由と、その仕組み

――ここまでのお話を伺うと、変更が入るたびに管理が発生する、神経を使う仕事に思えます。しかも担当される現場の規模は、以前より大きくなっている。それなのに残業は減っているというのは、どういうことなのでしょうか。

求職者の方から、平均残業時間はよく聞かれます。求人票には月20時間と記載していますが、実際にはそこまでいっていません。技術者に限った平均でも、20時間以下です。

担当する現場はこれだけ大きくなっているのに、残業時間は以前より減っている。逆行しているように見えるかもしれません。

理由はいくつかありますが、根っこにあるのは、一つの分野に注力してきたことだと思っています。

――一つの分野への注力が、どうして残業の少なさにつながるのでしょうか。

分譲マンションは、規格がある程度決まっているんです。だから、現場を回しやすい。

シリーズもののマンションであれば、「このシリーズならこういう規格だろう」という予測がつきます。あとは規模の大小の違い、という話になる。ゼロから読み解くわけではないんです。

付き合いの長いデベロッパーさんだと、どこを重視される担当者なのかも、事前に見えています。確認の取り方や、詰めておくべき順番が分かっている。

協力会社さんも、ほぼ固定です。関わる人が分譲マンションの仕組みに精通しているので、一から説明しなくても話が進みます。

つまり、毎回ゼロから組み立て直すことがないんです。そこが、時間の使い方に効いてきます。

――その型があると、現場での動き方はどう変わるのでしょうか。

現場に足を運ぶタイミングが、はっきりしているんです。

定例の打ち合わせと、工程の節目ごとの品質チェック。ここは必ず押さえます。逆に言えば、そこ以外で突発的に呼ばれることは、少ないです。

何かあれば写真や電話で連絡が来ますし、少し話せば通じます。お互いに作業のポイントを共有しているからです。

押さえるべきところが決まっているので、その一回一回に集中できる。図面の納まりをどうするか、次の工程に何を申し送るか。そういう判断に時間を使えるんです。

――ここまでは、一つの分野に注力してきたことの強みというお話でした。ただ、それだけではどうにもならない部分もあると思います。書類や図面の作業は、現場の規模が大きくなればその分増えていく。そこには、どう手を打ってこられたのでしょうか。

まさに、そこは手を打ってきたところです。

以前は、個人で全てを抱えていたんです。図面も、書類も、現場も、一人が持つ。それだと、どうしても抱え込んだ人のところで詰まってしまう。

そこで、CADオペレーターというポジションを作りました。それから、事務作業を担う人員も入れています。図面と書類を専門に見る人がいれば、現場を担当する人は、現場のことに向き合えますから。

もう一つは、一人で持たない形にしたことです。いまはある程度グループにして、お互いに助け合いながら進めています。自分の現場が落ち着いている時期に、忙しい人の業務を手伝う。そういう形ができています。

本当に手が足りないときは、品質管理部が検査を手伝うこともあります。品質管理部にも、営業にも、もともと現場を経験してきた社員がいるので、検査に行けるんです。

一人で全部を背負わない形に、少しずつ変えてきました。

――電気工事会社のなかには、事業の幅を広げていく会社もあります。貴社は今後、どのような領域を見据えていらっしゃいますか。

弊社は、今後もマンションを中心に据えていきます。電気工事の専業という形も、変えるつもりはありません。

一つの分野をやり続けていると、積み上がるものが同じ方向に揃っていくんです。図面も、現場の回し方も、協力会社さんとの呼吸も。

これは、入社してくる方にとっても同じだと思っています。身につけるものの方向が、途中で変わらない。分譲マンションの電気なら任せられる、という人になっていける。

私たちが会社として積み上げてきたものと、その方が個人として積み上げていくものが、同じ方向を向いている。そういう会社でありたいと思っています。

「平均2年程度で、現場を任せられる」——職人の経験が、そのまま資産になる

――型があり、分担の仕組みもある。では、実際に入社された方は、何を新しく覚えることになるのでしょうか。

図面が読める方であれば、まず、お教えするのはCADの操作ですね。

電気工事士として現場で手を動かしてこられた方であれば、図面を読む力はもう持っていらっしゃる。そこが、この仕事のいちばん大きな部分なんです。だから、入口としては入りやすいと思います。

教え方についても、社員が試行錯誤して作ったカリキュラムがあって、それを基に学んでいただく形を整えています。これは私が指示したものではなく、社員自身が考えて実行してくれているものです。

長年、現場出身の方を施工管理として育ててきましたから、そうした方を立ち上げていくノウハウは、他社に比べて圧倒的にあると思っています。

――教える体制があることは分かりました。ただ、転職を考えている方が本当に知りたいのは、その先だと思います。実際に一つの現場を任されるまでに、どれくらいかかるものなのでしょうか。

まずは賃貸マンションなど、分譲ではない物件から入っていただきます。分譲をいきなりお任せすることはあまりありません。

現場を知っている社員が、必ずつきます。発注から図面まで、こちらで全部チェックする形です。そこで、一通りの流れを覚えていただく。

そこから、一つの現場を任せられるようになるまでですが、半年の方もいれば、3年の方もいます。平均すると、2年ぐらいでしょうか。

――平均で2年というお話でした。その間の収入がどうなるのかは、転職を考える方にとって最も現実的な不安だと思います。職人から施工管理へ移る際に、収入面を気にされる方は少なくありません。

これまでのご経験を考慮して、それまでの水準を維持できるようにお迎えすることが多いです。しかも、入ってから上がる方がほとんどです。

なぜそれができるのか。その方が持っているものが、弊社ではそのまま使えるからです。

図面が読めて、現場が分かっている。弊社は、分譲マンションに絞ってきたので、現場の進め方も、協力会社さんとの関係も、ある程度決まった型があります。その中に入っていただければ、持っているものがすぐに活かせる。

だから、経験がないからといって、これまでのキャリアをリセットしていただく。そういう考え方はしていません。

加えて、臨時のボーナスも年に2回ほど支給しています。業績に応じて変わるものではありますが、いまはその状態が続いています。

――職人から施工管理へ移りたいという方は、どういう理由で来られることが多いのでしょうか。

この先も同じ働き方を続けていくのかどうか。そこを考えて来られる方が、いちばん多いです。

だから、施工管理という仕事に憧れて、というよりも、これまで培ってきたものを別の形で使えないか、という入り方をされる。その考え方は、私たちもよく分かります。

そして実際に、そうなんです。図面が読めて、現場が分かっている。それは、管理する側に回っても、そのまま働きます。

――早く立ち上がる方に、共通点はありますか。

人と話すことが苦にならなくて、好奇心があって、何でも聞いてくる方ですね。やっぱり、聞いてくる人が早いです。分からないことを分からないまま置いておかない。それだけのことなんですが、差が出ます。

現場は、ゼネコンさん、デベロッパーさん、協力会社さんと、多くの関係者と一緒に進めていく仕事です。聞いて、話して、進めていける方であれば、この仕事は回っていきます。

どの仕事にも言えることかもしれませんが、弊社の場合は特にそうだと感じています。

――先ほど、図面を読む力は管理する側でもそのまま働くというお話がありました。それとは別に、実際に手を動かしてきた経験そのものが効いてくる場面もあるのでしょうか。

あります。分譲マンションでは、部屋によってコンセントの位置が変わるといったことが出てきますよね。

そういうとき、現場作業のご経験がある方は、ご自身で対応できてしまうことがあるんです。気づいた時点で、工事士免許をお持ちですから、そのまま手を動かせる。

電気工事士の資格があれば誰でもできる作業なので、特別なことではありません。ただ、管理する側に手が動く人がいるというのは、現場では強いんです。もちろん、日常的に作業していただくわけではありません。あくまで、判断が早くなるという意味です。

「いまは、人を育てるのに良い時期」——経歴ではなく、これから積み上げたい意思を

――転職を考えている方のなかには、施工管理の経験がないことを引け目に感じて、応募をためらう方が少なくありません。最後に、これから面接に来られる方へ伝えたいことを伺えますか。

私たちが見ているのは、これまで何をやってきたかよりも、これから施工管理として積み上げていきたいと思っているかどうかです。

もちろん、施工管理のご経験があれば、それに越したことはありません。ただ、弊社は民間の分譲マンションが中心なので、同じ施工管理でも、たとえば役所の下水処理場や大規模なビルの改修をやってこられた方だと、業務の中身が少し離れてしまう。経験の有無というより、距離の問題なんです。

その意味では、現場を知っているということのほうが、私たちにとっては大きい。だから、門戸は広げています。

そして、いまはその方たちを迎え入れるのに、いちばん良い時期でもあります。育てるための時間とコストを、会社としてかけられる。

経験がないことを、引け目に感じる必要はありません。図面が読めて、現場を知っている。そのうえで、ここで積み上げていきたいと思ってくださるのであれば、一度お話をさせてください。

インタビュー

斉藤 大輔

斉藤 大輔

取締役統括部長

ソフトウェア・システムの会社でシステムエンジニアとして働き、通信関係の事業部にも在籍。30代前半でテクノサイシングへ。入社後は営業を7〜8年務め、現在は営業と工事の両部門を統括。

会社情報

株式会社テクノサイシング

採用情報

【建設業界での営業経験を活かせる】電気設備工事のルート営業職(即戦力)

正社員 / 300,000円 〜 700,000円 / 月
東京都 墨田区 石原4-25-12

【電気工事の知見・経験を活かせる】屋内電気工事の電気設備施工管理職

正社員 / 300,000円 〜 700,000円 / 月
東京都 墨田区 石原4-25-12
【監修】株式会社アンドパッド

【監修】株式会社アンドパッド

シェアNo.1 クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」の開発・提供を行う。施工管理、経営管理、受発注など建設現場と経営をつなぐクラウドサービスを展開するほか、建設業界特化型求人・転職サービス「ビルダーワーク」を運営。本メディア「企業の設計図」では、企業の「ビジョン」と「採用」を紐解き、求人票だけでは見えてこない社風や本音、採用ロジックを発信しています。