BUILDER WORK

裁量は大きく。疲弊しない現場。
──「経営で現場を支える」社長がつくった大規模修繕会社の設計図

裁量は大きく。疲弊しない現場。 ──「経営で現場を支える」社長がつくった大規模修繕会社の設計図

下請から大規模修繕の元請けへ。三和建装の事業は、マンション管理組合から直接受注する分譲マンションの大規模修繕と、UR賃貸住宅をはじめ入札で受注する公共系案件——その二本柱で成り立っている。手がけてきた建物には、東京国際フォーラムや東京大学、国立スポーツ科学センターといった名の知れた施設も並ぶ。

同社の特徴は、塗装や防水といった単体工事ではなく、建築一式工事として受注する比率が際立って高いことにある。また、官民のバランスを取りながら途切れなく現場を稼働させるオペレーションにより、利益率は同業他社を大きく上回る水準にあり、無借金経営を継続。企業評価をする調査機関の評点は改修業界で日本トップクラスの水準を記録している。

本社を西東京市に構え、東京西部・埼玉西部を中心としたエリア戦略で地域優位性を確保。社員約100名のうち20代が約3割、女性比率も3割に迫り、ミャンマー・ネパール・中国と3カ国の外国籍社員が現場で活躍する。2026年8月には横浜市に支店の開設を控え、さらなる拡大フェーズに入った。

「現場は任せる。私は経営で現場を支える」──裏方に回った社長の設計思想

――旅行業界から建設業へ。異色の経歴ですが、入社からわずか6年で社長に就任されています。

早く経営者になる、と決めていました。そのためには全部はできない。経理、営業、現場——どれかに集中しないと間に合わないと考えて、現場は最初から優秀な社員に任せると決めました。うちには歴代の工事部長をはじめとする現場のプロがいましたから。

その代わり、私は経理と営業の責任者を自分でやりました。数字がわからなければ経営はできないし、営業ができなければ、会社がピンチの時に仕事を取ってこられませんから。

――建設会社の経営者としては、珍しい歩み方ではないでしょうか。

現場あがりではない分、現場への敬意は人一倍あるつもりです。だからこそ、私の仕事は現場の人間が仕事に集中できる土台をつくることだと考えています。

儲からない仕事を取らない。経営を安定させる。利益を現場の環境と社員に還元する。順番はすべてここから始まっていると考えています。

「営業にノルマを持たせない」──利益を生む受注戦略とは

――貴社の経営指標を拝見すると、利益率が同業他社と比較して非常に高い水準です。無借金経営も継続されています。この収益構造の背景には、何があるのでしょうか。

分譲マンションとUR・役所の案件を両軸でやっているからです。車の配車表のように、途切れなく仕事をしていくためには、官庁と民間をバランスよくやって、隙間なくつなげていくオペレーションが必要です。民間か役所のどちらか1本だと、どうしても隙間が空いてしまいますが、両方並行しているのでうまく回っています。

――その利益体質を支えているのが、「営業にノルマを持たせない」という方針だと伺いました。

はい。営業マンにノルマを持たせると、儲からない仕事を取り始めるんですよね。うちの場合、優秀な現場監督がいて、その人にどの仕事を割り当てるかが最も重要です。

あえてノルマを持たせないのは、みんなの持ってきた仕事をテーブルの上に並べるためです。営業マンが集めてきた案件を全部並べて、「この監督にはこの物件」「この案件は別の代理人に」と、現場監督のレベルや案件の条件を見て選別する。それが最終的な利益率につながってきます。

――限られた現場監督というリソースに、最も条件の良い仕事を割り当てるということですね。

この仕事は、現場監督の数でしか売上が立たない仕事なので。それを考えると、限られた現場監督に、適当にチョイスした仕事を割り振っていいのかという話です。当社の現状に適した条件のいい仕事を集めるのが営業マンの仕事だということですね。

「全部一人でやれることを楽しいと思える人」──採用する人、しない人の境界線

――中途で貴社に入社し、活躍している方にはどのような特徴がありますか。前職の分野も含めて教えてください。

いろんな方がいらっしゃいます。サッシや金物をやっていた人、新築の経験者、少し畑違いで戸建てリフォームだった人。本質的には、経験よりもコミュニケーション能力や仕事に対する考え方、適応能力が重要です。

最近、「適応能力」というキーワードがよく出ます。経験値はもちろんありますが、入社後の適応能力が高い人が活躍しています。

新築経験者の場合は、改修に移行した時に「なぜここが劣化しているのか」を理解できるなどの強みがありますね。年齢・性別に関わらず、やる気が重要です。元々ガードマンをしていた方や、看護師を目指していた方など、本当に多様です。

伸びた人の共通点は、責任感はもちろん、成長意欲があること。わからないことをどんどん学ぶ姿勢が大事です。

最速で現場代理人になった中途社員の共通点

――中途入社で最も早く現場代理人になった方は、どのような経緯でしたか。

Nさんは1年くらいで現場代理人になりました。以前からUR系の大規模修繕で近しい仕事をしていた下地があったんです。うちのやり方を覚えて、「次は責任者でやってみるか」というスピード感のあるパターンでした。

面接で「この人は採用しない」と判断するポイント

――一方で、過去に「合わなかった」と感じた方にはどのような特徴がありましたか。

かつては、経験があるのに自分で手を動かさない人がいました。昔は、現場所長が座ったまま部下に指示するだけで済んだ時代もありましたが、当社のような少数精鋭の会社では所長自身が動く必要があります。

うちの会社では「これも自分でやるんですか」と驚かれることもあります。分業が進んだ大きな会社と比べると、一人の現場監督が担う範囲が圧倒的に広いんです。そこにギャップを感じる方もいれば、裁量の大きさにやりがいを感じる方もいる。だからこそ、全部一人でやれることを楽しいと思える人の方がうちには向いています。

――面接の場で不採用と判断されるのは、具体的にどのようなケースですか。

最近大きな仕事が増えてきて、一つの現場に複数の社員が入ることが多いんです。5人くらいのチームもたくさんあります。そういった時に、この人が入ることで全体のバランスが崩れるな、というケースは採用しません。既存の社員ありきで採用を考えています。

――チームのバランスを崩す方は採らない、というお話がありました。ほかに、経験や資格が十分でも見送るケースはありますか。

入社した時点のことだけでなく、その先を見ています。その方が一つの現場を経験した後、今度は自分がチームの頭に立つわけです。その時に、下につく5人をまとめられるだろうか。若手を育てられるだろうか。それが難しいだろうなと感じる方は、最近はお断りするようにしています。

現場を回せるかどうかは入口にすぎなくて、いずれ人を育てる側に回れるかどうか。そこまで含めての採用ですね。

――経験豊富な方に対しては、どのような期待と条件がありますか。

いきなり現場所長を任せてほしい、という方もいらっしゃいます。ただ、どんなに優秀な方でも、まず一度はうちのやり方を見てもらわないと任せられません。二現場目から所長をやれる力のある方は実際にいるでしょうし、それならすぐお任せします。でも、最初の一現場を惜しむ方とは、お互いに合わないと思うんです。

遠回りに見えて、それが一番早い。会社のやり方を掴んだ方から順に、大きな裁量を渡していきますから。

省エネ改修と大学院──社会課題に自ら飛び込んだ2年間

――貴社が取り組む省エネ改修工事について教えてください。これは業界でも珍しい取り組みなのでしょうか。

省エネ改修は難しい工事なので、他社でやっている会社も数社しかありません。

取り組もうと思ったきっかけは、冬の寒さや夏の暑さへの対策です。最上階で亡くなる方や室内熱中症で亡くなる方が多い。コンクリートが蓄熱して室内に熱を放出し、夜間が暑いという問題があります。社会に貢献できる工事は、利益が薄くてもやらなければいけないと思っています。

――その知見を深めるために、大学院にも通われたと伺いました。

はい。省エネ改修にかける想いは、単に言っているだけではありません。ノウハウを深めるために2年間大学院に通い、断熱などのテーマで論文を書きました。2026年3月に卒業したばかりです。イタリアやドイツにも視察に行くなど、いろいろ取り組んできました。

――省エネ改修は、今後の官公庁案件の入札要件に組み込まれる可能性があるのでしょうか。

今はテスト的にURで1件だけ出ました。今後どうなるかは不明ですが、URのような大きなところが取り組めば、すごく広がっていく可能性はあります。

分譲マンションでは予算の問題で難しいことが多いですが、役所系の工事に入っていけば、先行者利益を得る可能性がある。今後、需要が拡大していく可能性のある工事だと捉えています。

「いい人財がいて初めて会社は成り立つ」──神奈川支店と、次の3年への設計図

――社長にとって、採用は経営全体の中でどの程度の比重を占めていますか。

高いですね。私の中では、採用のことを考えている時間が半分くらいだと思います。いい人財がいて初めて会社は成り立ちます。スタートはそこからです。

いかに自分が採用に関与できるかを考えていて、一次面接から私が出るようにしています。

――一次面接から社長が出るという企業は珍しいと思います。その理由は。

今はスピードが重要です。回りくどくやっている間に他社に行かれてしまう。自分が最初から出た方がいい。

――貴社が掲げる「SKIプロジェクト」について教えてください。

直近数年で始めた取り組みです。採用・教育・育成の頭文字を取って「SKI」。新卒にメンターのような「エルダー」をつけて、5年目くらいの先輩が新卒の面倒を見る。入社後のケアをしっかり行います。

目標は「トリプル3」で、プロパー3割、女性比率3割、平均年齢30代。これを掲げて進めたところ、年々達成に近づいています。現在は、平均年齢41.9歳、プロパー比率32.3%、女性比率24.2%。

採用の方法は私の独断ではなく、みんなの意見や女性社員の意見も聞きながら進めています。今年は高校生採用に力を入れてみようという提案があり、「それは面白いからやってみよう」と。積極的に意見を取り入れています。

――横浜市に支店の開設も控えていますが、今後の組織拡大に向けて、どのような人財を求めていますか。

今後は各支店をどんどん強化していきたいと思っています。2026年8月に横浜市に神奈川支店を開設する予定です。

うちは一都三県で責任ある仕事をしたいと考えているので、むやみに拡大はしません。工事部長や役員を信用していて、彼らと同じレベルの人がいない限りは新エリアに出ません。だから転勤もないです。

それと、超高層マンションや省エネ工事、耐震工事など、いろんな種類の工事にチャレンジしているので、似たような工事だけでなくスキルを磨いていける環境はあると思います。そういった成長機会があることは、候補者に伝えたいところですね。

「利益を社員に還元する」──ノルマなし、賞与3回、確定拠出年金の設計思想

――貴社の報酬体系や福利厚生について、経営者としての考え方を教えてください。

うちの場合は決算賞与ということで、利益を社員に還元しています。忙しい分、社員に還元する。夏・冬・決算の年3回です。

2026年10月からは確定拠出年金も導入します。建設業界の中小企業の中では、大企業がやっているようなことにも先んじて取り組んでいるつもりです。将来、社員が頑張っていく上で、退職金を増やしてあげたいなという想いがありますね。

――「現場事務職」という独自の職種も設けていると伺いました。

いまの工事現場は、書類作成に膨大な時間を取られています。本来、現場監督には品質・安全・工程・原価の四大管理に集中してほしいのに、夕方に現場が終わってから深夜まで書類作成、という働き方になりがちなんです。

それなら、書類業務を専門に担う人を現場に置こう、というのが「現場事務職」です。事務というと本社勤務のイメージですが、うちの現場事務は現場が職場です。ヘルメットをかぶり、作業着を着て、自宅から現場へ直行直帰で働いてもらっています。

新卒採用から始めた職種ですが、思った以上に採用は順調です。実際に現場の進行が目に見えてスムーズになりました。監督が管理業務に専念できる環境は、確実に整ってきていると思います。

――建築一式で受注し、ノルマなしで選別するからこそ利益が出る。利益が出るからこそ社員に還元できる。その循環が貴社の強みなのですね。

そうですね。民間と官庁のバランス、お客様と社員のバランス。すべてにおいてバランスをうまく意識しています。

土日祝は休みですし、現場事務の方がいることで現場代理人の負担も減っている。そういった環境を維持するためにも、利益が出ない案件を取ってきてはだめで、適正な利益を確保する取り方をしなければならない。すべてがつながっています。

「経験を持つ人にこそ、腕を振るえる現場がある」──転職を検討しているあなたへ

――最後に、経験を積んだ現場代理人の方に向けて、メッセージをお願いします。

うちの現場は、営業が選別して取ってきた条件の良い案件です。そこで協力会社の選定から安全・品質の判断まで、すべて自分の裁量でやってもらう。経験と資格を持った方にとって、これほど腕の振るいがいのある環境はないと思っています。

もちろん、最初の一現場はうちのやり方を見てもらいます。ただ、力のある方ならそこからは早い。実際に、近い経験を持って入社し、1年で現場代理人を任せた例もあります。

そしてその先には、チームの頭として若手を育てる役割が待っています。いま20代の社員が3割いて、彼らを育ててくれる経験者を求めているんです。現場事務が書類を担い、監督が管理に集中できる環境も整えました。転勤もありません。培ってきた経験を、次の世代に還元しながら存分に活かしたい——そういう方に、ぜひ来ていただきたいですね。

インタビュー

中 衆司

中 衆司

代表取締役社長

兵庫県姫路市出身。旅行会社勤務を経て、2007年に34歳で三和建装に入社。営業・経理の責任者を自ら務め、入社わずか6年で2013年に代表へ就任。2026年3月、早稲田大学大学院を修了し、省エネ改修の知見を経営に活かす、異業種出身の経営者。

会社情報

三和建装株式会社

西東京市

採用情報

施工管理の経験を活かせるマンション・公共施設の改修工事における品質管理・安全パトロール職

正社員 / 350,000円 〜 470,000円 / 月
東京都 東久留米市 前沢 4-3-7

1級or2級建築施工管理技士資格を活かせる施工管理|さいたま市/10046

正社員 / 394,000円 〜 788,000円 / 月
埼玉県 さいたま市 大宮区吉敷町1-23-1 ONEST大宮吉敷町ビル6階

1級or2級建築施工管理技士資格を活かせる施工管理|千葉市/10045

正社員 / 394,000円 〜 788,000円 / 月
千葉県 千葉市 中央区中央1-11-1 千葉中央ツインビル1号館905号室

1級or2級建築施工管理技士資格を活かせる施工管理|横浜市/10044

正社員 / 394,000円 〜 788,000円 / 月
神奈川県 横浜市 横浜市中区相生町6-104 横浜相生町ビル5階

1級or2級建築施工管理技士資格を活かせる施工管理|西東京市/10036

正社員 / 394,000円 〜 788,000円 / 月
東京都 西東京市 田無町1-12-6
【監修】株式会社アンドパッド

【監修】株式会社アンドパッド

シェアNo.1 クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」の開発・提供を行う。施工管理、経営管理、受発注など建設現場と経営をつなぐクラウドサービスを展開するほか、建設業界特化型求人・転職サービス「ビルダーワーク」を運営。本メディア「企業の設計図」では、企業の「ビジョン」と「採用」を紐解き、求人票だけでは見えてこない社風や本音、採用ロジックを発信しています。