売上9億から25億へ。
大工の血を引く工務店が描く「第二創業期」の設計図
現社長の父である大工の棟梁が創業し、現在は浦和を拠点に3店舗を展開。従業員25名の規模へと成長を遂げたリフォーム・リノベーション企業、嶋澤啓工務店。
同社は、キッチンや風呂の交換といった設備リフォームにとどまらず、間取り変更を伴う200万〜800万円のゾーンにおいて、ハウスメーカーや大手競合よりも価格優位性のある確かな提案力で高いシェアを獲得してきた。
現在、同社はリフォーム事業に加えて不動産事業を本格化させ、中古住宅にリノベーションという付加価値をつけるビジネスモデルを確立。前期売上は9億円を達成し、今期は11〜12億円を見据えている。2030年には売上25億円を目指す「第二創業期」の真っただ中にある。
しかし、その拡大の裏側には、2015年に経験した新卒採用の失敗と、「営業をしない工務店」という独自の組織哲学が存在する。反響に追われ、押し売りを一切必要としないビジネスモデルの内側で、彼らは今、どんな壁にぶつかり、どんな仲間を求めているのか。
代表と取締役、二人の本音から、創業75年の同社が求める人材の条件と、その採用判断のロジックを紐解く。
「利他の気持ちであふれている。まず人間としてすごいなと思った」──62歳の新戦力がもたらした変化

――直近の採用活動において、実際にどのような方が入社され、組織に変化をもたらしているのでしょうか。
今年2月に採用したIさんは、62歳です。すごく物腰が柔らかくて、会社に出社するとまずみんなの机の脇を整理したりして、利他の気持ちがいっぱいの方です。
お客様から電話がかかってきても、受電したことを申し訳なく思って、一度こちらからかけ直したりする。そこまでやっている人は今までいなかったです。建築の仕事もずっとやってきたから知識はあるんだけど、まず人間としてすごいなと。そういう人が採用できたということですね。
――もうお一方、他業種から転職された若手の方もいらっしゃると伺いました。
Mさんに関しては、他業種からの転職で、建築には初めて関わる方でした。面接時点ですごく印象的だったのは、とても素直な今どきの若者という感じで、話を聞いてもすぐに頷いて飲み込んでくれるような方です。
実際に一緒に働いてみると、建築という専門的なことを素直に覚えようという意欲がすごく見受けられて、建築の面白さ、難しさ、楽しさを一つ一つの案件でかみしめながらやっています。
私がすごく嬉しかったのは、途中で建築士になりたいと思ってくれたようで、将来の目標として二級建築士の資格を取りたいと言ってくれたことです。周りのスタッフも彼に対してより学んでほしいという気持ちがあるようで、難易度が少し高い案件を任せたり、経験ある社員とペアで対応することで現場の経験を積めるようにしてくれています。
――周囲も巻き込んで、教育の機運が自然と生まれているのですね。
一緒にやろうぜと言うと、彼の場合は嫌々じゃなくて、「ぜひやらせてください」と返ってくる。自分で勉強したい、経験してみたいという気持ちがありありと分かるので、頼む方も気持ちいいというか、ありがたいですね。そういう気持ちはお客様にも通じると思います。
もともとはホテルの厨房でシェフとして働いていて、その後は映像制作会社にいた方です。建築の経験はゼロでしたが、素直さが何よりの武器になっています。
売上10億円の壁と、新卒採用の失敗に学んだこと
――今の会社のフェーズは、貴社の中でどういう位置づけになりますか。
今までリフォームという一つの柱しかなかったところに、不動産という事業を始められたのが成長への大きなきっかけでした。企業として売上10億を超えるのは非常に難しいと実感してきましたが、新しく不動産事業を始め、中古住宅にリノベーションという付加価値をつけてお客様に届けることを始めたことで、10億円を超えられる兆しが見えました。
これをきっかけに、2030年に25億円へ伸ばしていきたいという考えです。そのために、新しい組織体制を作っていきたいと考えており、採用にも力を入れています。
――今、お二人は採用にかなり時間を使っていらっしゃいますか。
最優先です。明確に増えました。
ありがたいことに、昨年12月から求人を出し始めて、2026年6月時点で91件のご応募をいただいています。その中で採用したのは2名というところで、実際に面接を通って内定を出すところまでは、少し門が狭くなってきています。
一つ一つの応募に対してすごく真剣に考えていますし、この会社の社風や経営における価値観に合った人なのかどうかを、すごく慎重に見ながら内定を出させていただいています。
――過去の採用で、苦い経験もされたと伺いました。
2015年に、身の丈に合わない新卒採用をやってしまったことがありました。出店するには人を採らなければいけないという気持ちが先立って、新卒を4人採用したのです。
しかし、教育する力がないのに新卒を採ったので、案の定3、4年ぐらいで皆辞めていきました。実際には育った人もいますが、ある店舗では、仕事の内容を選んだり、外壁工事はうちはやりませんと平気で電話で断ったりするような状況でした。
――その経験を経て、採用の方針はどう変わりましたか。
ちゃんと社会経験を積んで、それなりの志を持った人に来てもらいたいと思うようになりました。
Mさんという社員がいるのですが、もともと賃貸物件の原状回復をしていた方で、ここでちゃんと建築の仕事ができるようになりたいということでうちに来てくれました。基本的にはビジネスマナーやお客様に対する接し方がちゃんとできている人です。建築知識はまだ足りない部分もありますが、自分の足りないところを理解しながら一歩一歩成長していくんだという気持ちがある。ちゃんとした大人が入ってきたなという印象です。
コロナがあって、うちもここからもう一度成長していかなきゃいけないと思い始めていた時に来てくれました。今は本社の店舗責任者になっています。
「月に2千万円の売上を取ってくるスーパーマンはいらない」──採るか、採らないかの判断基準

――面接では、どういうところを見ていらっしゃるのでしょうか。
面接では、まず私たちの方から会社のことを紹介していく中で、中古住宅を買う、リノベーションをすることに共感してくれるかどうかが一つポイントだと思っています。
自分で引っ越しをした経験があるか、家を買った経験があるか、といった質問もさせてもらっています。中古の住宅をリノベーションして、そこに付加価値を持って新しい生活を始めてもらうというビジネスなので、その付加価値をつけるというところに共感してもらえるかどうか。
あとは、会社の理念と目的が「建築と不動産を通じて地域社会の方を幸せにする」というところなので、そこに共感してもらえるかどうかも見ているポイントです。
――最終的に内定を出すか出さないか迷った時、何をもって決めますか。
やはりお客様に寄り添って仕事ができるか、ですね。
本当はスーパーマンみたいな、月に2千万円取ってくるような人を採用したいところですが、うちの会社はそうではありません。厳しいノルマを設けることなく、毎月普通に残業もせずに500万、600万の契約が取れて、それでずっとやっていけるような人が理想です。
「我が強くて、お客様のことを考えない人は断りました」
中には、1000万とか1500万とか契約して、すごく我が強くて、お客様のことをあまり考えないような人もいるようです。過去にそういう人が何人かいましたが、断りました。うちには合わないかなと。
――それは貴社が大事にしている、お客様と親戚付き合いのような関係性を築いていくという考え方に繋がりますね。
そうです。長く働いてもらうことの方が大事です。無理せず長く、ということですね。
20年ぶりのピンポンが動かした、2つの家族の人生
――これまでの仕事の中で、記憶に残っている案件はありますか。
この間、面白いことがありました。ある家があって、その奥の家のおじいさんが体調を悪くして家を売らなければいけなくなったのですが、建築的に確認申請を取れる家ではなかったので、誰も売れない物件だったんです。だけど、浦和の一等地にある。
この家もその手前の家も、うちの父が建てた家で、両方とも私が学生の頃から年始の挨拶に行っていた家でした。手前の家は、親父が建てた後にハウスメーカーで建て替えてしまったんですけど、そこの家のおじさんおばさんも私はずっと知っている。
20年とか25年ぐらい疎遠になっていたんですが、ある日ピンポーンと押して、「裏のおじいさんの家を売るって言うから、買いませんか?多分安く売ってくれますよ」みたいなことを言って、一年がかりで買ってもらったんです。
――20年以上も会っていなかった方の家に、突然訪ねていけるものなのですね。
気軽にピンポンと押したら家の中に入れてくれて、お客さんも「ああ」と迎えてくれて、裏のおじいさんのことも話ができて、ちょっとありえない金額で譲ってくれたんです。
両方の家の方がすごく喜んでくれて、おじいさんも「心置きなく過ごせる」と。手前の家の方は「息子に資産が残せる」と。
でもそれは、無理やり親父に連れて行かれて、学生時代から工務店なんか継ぎたくなかったんだけど、年始回りをやらされていたから、スッとできたんです。それをやりながら「この仕事は俺じゃなきゃできないな」と。それってすごい醍醐味じゃないですか。だから、そういうふうにうちの社員にもなってもらいたいですよね。
「集客は会社の責任。社員はそれで苦労することはない」

――貴社でもっとも活躍している社員は、どのような方ですか。
Sさんは不動産事業部の営業で、金融関係の会社にいた方です。保険を販売したり、住宅ローンを斡旋する仕事に関わっていました。
今、社内ではお客様に対して中古物件の仲介という形で営業活動をしてくれているんですが、前職で培った金融や住宅ローンに関する知識が頼もしく、お客様からの質問にも的確に答えています。家を買うということにおいて住宅ローンを組めるかどうかは非常に大きなことで、難しい条件でもなんとか銀行を見つけてきてお客様に紹介するということを一生懸命やってくれています。
去年の不動産の仲介契約目標をクリアして、不動産事業の立ち上げのタイミングですごく力になってくれました。
――Sさんを採用された決め手は何だったのでしょうか。
まず一つは、本人の人柄として、すごく明るいコミュニケーションを取れる方であることです。一緒に対話していてすごく楽しい気持ちになるような方なんです。
また、これまでも、リフォームにおいて金融の知識が必要だと考えていましたし、うちの会社に少し欠けている部分だなとも思っていました。そういった知識のある人が入社してくれて、金融や住宅ローンの紹介が内製化できるという点も評価しました。
――貴社は「営業をしない営業」というスタンスだと伺いました。それを支えているのは何ですか。
うちは工務店なので、営業会社だとは思っていません。「いくら売る」というのは少し違うかなという感じです。私は技術者出身なので、普通に見積もりを出せば普通に契約を取れる。「契約してください」なんて言わなくても、契約をもらえるだろうという感覚です。
目標はもちろん各自に持ってもらいますが、目標の半分しか仕事が取れなかったからといって「何してるんですか」みたいなことは一切言いません。工務店はそんなにしゃかりきになって営業するような会社ではないと思っています。
集客は会社の責任です。誠実にお客様との約束を守って、「1週間後にちゃんと見積もりを出しますよ」といった約束をきちんと守っていれば、上手いことを言わなくても仕事は絶対に取れるはずです。
Iさんも言っていましたが、前の会社は反響が足りないために、リフォームをやるかやらないかわからないお客様に何回も電話して確認しなきゃいけなかった。うちは次から次へと案件が来るので、そんな時間がない。逆にありがたいと。「数字を作れ」なんて言わないんだけど、常に来る新しい案件を着実にこなしていれば数字が作れると。
――「営業しない営業」という考え方の原点はどこにあるのでしょうか。
昔のことを思い出しますね。うちの父が若い頃は仕事に困っていなかった。次から次へと仕事が来て、大工だから自分でやるわけで、朝8時から夕方5時まで現場で家を作って、家に帰って夕飯を食べて、またそれから出て行って、次の現場の骨組みの加工を夜9時ぐらいまでして帰ってくる。
営業でノルマっていうのは全然わからない。仕事があるでしょ、みたいな感覚です。昔の棟梁ってそうじゃないですか。腕でしょう。
反響を持ってくるのは会社の仕事だから、社員さんはそれで苦労することはないんですよ。真面目に普通にやってくれれば、500万、600万の契約が取れて、残業もしないで、124日休めて、長く働いてくれればいい。
――2030年に売上25億円という目標を掲げています。そこへ向けて、組織はこれからどう変わっていく必要があると考えていますか。
これまでリフォームという一つの柱しかなかったところに、不動産という事業が加わりました。中古住宅にリノベーションで付加価値をつけて届けるこのビジネスで、長く越えられなかった10億円の壁を超えられる兆しが、はっきりと見えてきたんです。
ここから先は、その成長を支えられる新しい組織体制を作っていきたい。だからこそ今、採用を最優先に位置づけています。
――具体的には、どのような役割を担える方に来てほしいとお考えですか。
不動産事業を立ち上げて痛感したのは、金融や住宅ローンといった、これまでうちの会社に欠けていた専門性があるということでした。その部分を社内で担える人が入ってくれると、お客様への提案を内製化できる。会社としての厚みが、一段増すんです。
一方で、建築の側も同じです。今ある専門性に甘んじるのではなく、もっと高めていきたい。リフォームと不動産、二つの柱のどちらでも、自分の専門性を伸ばしていける人に来てほしいと思っています。
――専門性は、入社してから高めていける環境なのでしょうか。
そうですね。実際、建築未経験で入った若手が、自分から二級建築士を目指すようになりました。周りのスタッフも、少し難易度の高い案件を任せたり、ペアで現場を経験させたりと、自然と育てる機運が生まれています。
専門性を高めてもらいたいからこそ、評価の仕組みでもそこをきちんと見るようにしています。組織として、人を育てていく。その土台を、いま作っている最中です。
「ノルマなし、年休124日」は小手先の福利厚生ではない
――貴社は年間休日124日と、リフォーム業界としてはかなり多い印象です。いつからこの休日にされたのですか。
新卒採用をやったり失敗したりする中で、プライベートも充実しないと長続きしないと思い至ったからですね。
コロナ前後のタイミングで離職もあったので、採用し、定着してもらうというところでは、待遇面も良くしないといけないと。少しずつ変えていきました。
ただ、休日を増やしたのは、単に待遇を良くしたかったからだけではないんです。
うちが大事にしているのは、前述した通り地域のお客様と「親戚付き合い」のような関係を続けていくことです。ある家の仕事を一度引き受けたら、その家をずっと面倒みていく。そうやってお客様にずっと寄り添うには、社員に長く働き続けてもらわないといけない。
「長く働いてもらうために、休めるようにする。」順番としては、そういうことなんです。
――休日の多さも、お客様との向き合い方とつながっているのですね。
そうですね。うちは「営業しなくていい営業」の会社なので、押し売りに時間を使う必要がない。その分、社員には建築そのものに腰を据えて向き合ってほしい。
無理なく長く働けて、目の前のお客様としっかり向き合える。土日のどちらかは必ず休めますし、年休も124日ある。これは、リフォーム会社ではなかなかない制度だと思います。でもそれは、うちがやろうとしている仕事の形と、ちゃんと噛み合っているから続けられるんです。
――評価制度も作り直していると伺いましたが、どのような方向性ですか。
不動産事業が立ち上がって、今までになかった不動産の営業職ができたので、そこにおいて人を評価する仕組みが必要だということでスタートしました。
今までは定性と専門性の評価はあったんですが、少し複雑な項目が多かったので、誰が見てもわかりやすい項目に作り変えています。定性の部分の評価が一般営業という点ではすごく加点される割合が多かったんですが、専門性も高めてもらいたいので、そちらの配点もつくようになっています。
昨今の物価高という社会情勢において、昔の評価制度の昇給の幅がすごく小さかったんですよね。なので社会情勢に合わせながら昇給の幅を少し大きくしたり、バックオフィスの部分は評価がされづらいかなと思うんですが、会社を支える背骨の部分だと思っているので、そこで活躍してくださっている方にもちゃんと評価点を与えられるような仕組みにしたいと思っています。
――面接に来られる方の中で、貴社を選ぶ決め手になっているのはどこでしょうか。
面接でよく聞くのは、地域で長く経営している会社で、安定しているというところを選びました、という声です。75年経営しているということと、建築という専門性を獲得できると思ってくださったのだと思います。
いわゆる普通のリフォーム会社にあるような、飛び込みしろとか、断られても帰ってくるなとか、仕事は自分で見つけてこいとか、そういうことは一切言いませんし、そういう環境ではありません。
他社に比べて、長年この地域に根ざしてきた実績もありますが、もっとも大事なのは建築に集中できる環境です。変な営業はしなくていい。ノルマもない。建築というものに向き合う時間が長い。それが、うちを選んでくれる理由だと思っています。
「採用サイトに書いた思いを、読んできてほしい」

――最後に、これから面接に来る方に、これだけは準備してきてほしいということはありますか。
採用サイトというものを作りましたので、その内容は読んでいただきたいと思っています。
そこには会社の思い、大切にしている価値観を一生懸命書いたつもりですので、理念だとか、会社が目指している将来だとか、そういったところを読んでいただいて、ご応募いただけたら嬉しいです。
住宅の仕事をする人間は、ある家の仕事をやったら、ずっとその家を面倒見ていく。親戚付き合いができるくらいのレベルまで関わっていく心意気でやらないとダメだと思っています。
会社を経営するための利益は必要ですが、大儲けではなく、お客様が納得した金額で、見積もりの内訳を一つ一つ見なくても、表紙だけ見て「わかりました」と言っていただける仕事を続けていきたい。
その心意気に共感してくれる方と、一緒に働きたいと思っています。
インタビュー
嶋澤 徹
代表取締役
大工の棟梁であった父のもとに生まれる。大学卒業後、ゼネコンに入社し名古屋等で勤務。その後帰郷し、家業を継承。ハウスメーカーの下請けから元請けへと転換を果たし、浦和を拠点にリフォーム・リノベーション事業を3店舗・従業員25名の規模に成長させた。現在、不動産事業を加えた第二創業期を牽引する。
会社情報
株式会社嶋澤啓工務店
採用情報
【監修】株式会社アンドパッド
シェアNo.1 クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」の開発・提供を行う。施工管理、経営管理、受発注など建設現場と経営をつなぐクラウドサービスを展開するほか、建設業界特化型求人・転職サービス「ビルダーワーク」を運営。本メディア「企業の設計図」では、企業の「ビジョン」と「採用」を紐解き、求人票だけでは見えてこない社風や本音、採用ロジックを発信しています。